長男と妻が中学受験を最後まで戦えたのは円陣のおかげだと思う

今日は前回に引き続き家族での円陣の話(↓)

yoshi-tankun.hatenablog.com

 

中学受験を経験したことがあれば、あるいは中学受験関連のブログやら書籍やらを読めばすぐにわかることであるが、しばしば中学受験は家族関係を破壊する。人間の生死に関わる事件であったり人間関係の絶縁にまで至ってしまうようなケースは稀であろうが(ただしゼロではなさそうだ)、ほとんどの家庭において大なり小なり人間関係のトラブルを抱えることとなる。当然、我が家も例外ではなかった。

 

以下の話は我が家の出来事だ。ちょっと長いのだがお付き合いいただけると嬉しい。

 

昨年の11月の下旬、つまり長男の中学受験の終盤において、我が家の空気はどんよりとしたものだった。根本的な理由は単純だ。このちょっと前から始めた長男の第一志望の学校の過去問で、思ったような点が取れないからだ。このことによって、妻の中での不安が増大し、これまで貯めてきた不満やらストレスが小爆発を繰り返し、大爆発まで待ったなしという状況だったのだ。

 

強い不安や極度のストレスは人間のパフォーマンスを悪化させる。家事も学習サポートも手早く効率的にこなす妻であったが、この時期はいろいろと作業が滞っていた。その被害を最も受けたのが長男である。一例が丸付けだ。長男の勉強の丸付けは基本的に妻がすることになっていた。私は丸付けなんて自分でやればいいじゃないかと考えていたが、なに深い考えがあったのだろう、妻は強固に丸付けは自分がすると主張し、このような状況下にあっても主張し続けた。結果、妻は丸付けをし忘れることが増えた。丸付けのされていないノートを見て、長男は「お母さん、丸付けまだ〜」と催促する。特に非難の意図はないのだろうが、この発言が妻の怒り爆発のラストストローとなる場合が多々あった。結果、長男と妻との関係が険悪になっていったのだ。

 

このような妻と長男との緊張状態にあって、正直、私はなにもできないでいた。この記事を読んでくれている方の中には、こういうときこそ父親の出番だろう、と思われるかもしれないが、少なくとも我が家においては父親の積極的な介入は最適解ではなさそうだった。この中学受験の主役は当然長男自身であるが、もう一人の主役は誰かといえば、それはこれまで献身的に長男を支え続けてきた妻に他ならない。そんな妻を差し置いて、私が長男の学習面のフォローにしゃしゃり出れば、たとえ受験結果的に成功となったとしても、夫婦関係には致命的な亀裂が入ったこととなっただろう。物語の終盤で主役の交代なんてありえない、といったところだろうか(どうでもいいが、ふと、ガンダム Seed Destinyシン・アスカの顔が頭に浮かんだ)。

 

では、他に私ができることはなにがあったのか。おそらく平常時であるならば、妻の不満の受け皿になるというのが正解だろう。だが、私はすでにそれをし続けており、この受験の終盤において、私の受け皿はもう一杯だった。それに、そもそもの不満の原因は長男であり、そちらの抜本的な解決がなされぬまま、延々と不満を聞かされ続けることに私の方も限界を感じていた。では、妻は何がそれほど不満だったのか。確かに過去問の出来が不十分だったかもしれないが、それが理由で怒るような人ではない。不満の理由は、次男の字の時と同じであった。妻は長男のノートの使い方に怒っていたのだ。

 

長男はノートに問題を解き、妻はそれを丸付けする。長男はとにかく量をこなしたい人だったので、すごい勢いでノートに問題を解いていた。当然、丸付けするにあたっては、ノートに書かれた問題の答えが、何の問題かがわかる必要がある。そのため、ノートには、科目、テキスト、問題番号などがはっきりと書かれていなければいけない。しかしながら、とにかく量を解きたい長男は、しばしばそれらを書き忘れてしまう。そうすると、妻は一体全体どの問題の解答かわからないものを見ながら、丸付けに四苦八苦する。なので、妻は問題番号を書けと長男に言い、長男は分かったといって約束をする。だが、約束の効果は一時的なもので、またすぐに元に戻ってしまう。そのようなやりとりが年単位で繰り返されてきた。

 

このようなやり取りの中で、妻が感じていたのは、長男が丸付けする側の苦労をまったく理解していない、ということだろう。少しでも丸付けする側を思いやる気持ちがあり、感謝の気持ちを持っていればこのような事態になるはずがないと考えていたのだ。長男の行動から垣間見える、母親への感謝の欠如こそが、不満の本当の理由であった。

 

それでは、本当に長男は妻に感謝をしていなかったのだろうか。そんなことはない。長男は十分に母親のことを思いやっていたと思う。しかしながら、受験のプレッシャーの真っ最中の小学6年生に、簡単な約束事かもしれないがそれを完全に守れというのは難しかったのだと思う。だが、疲弊しきった妻にこのような説明をしてもほとんど意味はなかった。

 

こんな感じで、妻が追い詰められていって、その結果として長男も追い詰められていった。私が妻の代わりに、私が思うように長男の勉強をコントロールすることは禁止されていたし、かといって、妻の決めたルールをうまく守れないでいる長男のことを注意する気も起きなかった。気がつけば、長男は一人でリビングルームで勉強していて、妻はベッドルームに引っ込んでいる、という状況が数日続いていた。私は、ベッドルームで妻の愚痴を聞き、ときどきリビングルームにいる長男の様子を見る、というように、リビングルームとベッドルームを行ったり来たりしていた。

 

そんな最中で私が感じたのは、なぜこの子は一人で孤独に耐えながら勉強しているのだろう、という思いだった。もう勉強を教えてあげることは出来ないが、この子を孤独にさせないことぐらいは簡単じゃないか。そう考えると、自然とこれこそが自分が今できることに違いない、という確信が持てた。自分ができること、すべきことがわかるとあとは早い。いろんなアイデアが湧いてきた。

 

まず最初にやったことは、長男に「受験勉強中、俺はお前を孤独にさせない!」という父親としての思いをはっきりと伝えたことだ。長男は最初はきょとんとしていたが、すぐにちょっぴり笑いながら「そうだ、今僕はすごく孤独なんだ!」と元気に言い返してきたので、この方向性で間違いないとますます確信を深めた。

 

続けて、孤独にさせないという思いを可視化させるための、すぐに A4 用紙にスローガンを書いて壁に貼っておいた。確か、スローガンは、「孤独にしない、孤独を作らない、孤独を持ち込まない」という、若干意味はよくわからないが非核3原則にあやかったものだったと記憶している。

 

 そして、長男には、今後長男が家で勉強しているときは必ず近くにいてやる、という約束をした。これは意外と効果があったみたいで、これ以降、ときどき、「父さん、リビングにいて、約束したでしょ」と言われることがあった。

 

ここまでやって、自分と長男はかなり前向きな気分になったのだが、なんか画竜点睛を欠いているような気がしたのだ。なんだろう、と考えて見ると、すぐに答えはわかった。この家で孤独を感じていたのは長男だけではなかったのだ、と。長男のサポートで疲れ切った妻も、長男と妻が険悪な状況で、邪魔にならないように気を使って遊んでいた次男も、それぞれ孤独を感じていたはずなのだ。みんなの孤独を癒して、家族で一体感を感じるのに何かいい方法はないだろうか。そうだ、我が家で昔やっていた変な習慣、円陣がきっといいはずだ

 

早速、ベッドルームにいた妻と子供部屋にいた次男をリビングに集めて、円陣しようと伝えた。二人は最初はびっくりしていたが、とりあずは了承してくれた。正直、掛け声はうろ覚えだったけれど、みんなで手を繋いで大きな声を出して円陣をした。長男はとてもうれしそうにしていた。自分のためにみんなが集まってくれたからだろう。次男は楽しそうにしていた。みんながニコニコしていたからだろう。妻は笑いながら呆れたような口調で「あんた掛け声下手ね」といって、私の記憶にある通りの掛け声をみんなに伝えて、妻の音頭でもう一回円陣を行なった。

 

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円陣が終わったとき、リビングを覆っていたどんよりとした空気が晴れていることに気がついた。みな、久しぶりに笑顔だった。このとき、この中学受験はなんとかなるかもしれないと思った。仮に落ちたとしても、きっと我が家は大丈夫、と思えた。

 

こんな感じで我が家は受験の極限状態における人間関係の崩壊の危機から脱することができたと思う。こんな我が家の出来事が、これから受験するご家庭にちょっとでも参考になればとても嬉しい。

 

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